私は彼に愛されているらしい2
有紗から見れば大輔はそれはとても魅力的な人物だ。

真面目であれ、熱くあれ、そのひたむきさと姿勢の良さにどれだけ感心し惚れ惚れしたことだろう。

容姿だけではない、人間的にも面白味を持った最高の友人だとずっと誇りに思ってきたのだ。大輔が数多くの女性から思いを寄せられる理由もよく分かっている。

そんな男性からこんなに強く思って貰えるほどの魅力があるだろうか。

逃げ癖のある意地だけが支えの様な女にどこまでも頭を抱えたくなる日が続く筈に違いないのに。

しかしそんな有紗の疑問を切り捨てる声が大輔から聞こえてきた。

「ある。少なくとも俺には…大きな価値があるよ。」

「そんな。」

「こんなに見っともなく縋り付いてるんだ、自分だって情けないと分かってる。それでも俺は有紗がいい、有紗を選びたい。」

そして大輔は体を起こすと有紗の方に向いて彼女の視線を自分の方に向ける。

思うように掴まってしまった有紗は大輔の視線に射抜かれて身動きが取れなくなってしまった。

呼吸でさえも奪われそうなくらいに。

「もう一度チャンスが欲しい。」

声が出ない有紗は目を大きくすることで大輔の言葉に反応を示す。

「ただ恋人として俺と付き合って、ゆっくりと最初からやり直したいんだ。…指輪を外したままでいいから。」

その言葉に有紗の体が跳ねた。

大輔の視線は空になった有紗の指に注がれている。どの指を見ても大輔が贈った指輪は存在していなかった。

有紗の首から下げているチェーンにあることを大輔は知らない、有紗も何故かその事を伝えようとはしなかった。

切なそうに細くなる大輔の目に心が痛むが言葉も声も出せなかったのだ。

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