私は彼に愛されているらしい2
泣き声でさえも出ない有紗に大輔はどこまでも優しかった。

耳元で繰り返される謝罪と誓い、そして愛の言葉は有紗の傷だらけの心を少しずつ癒していく。

ずっとこうして愛されたかったんだ。

否定しないで愛してほしかったんだ。

自分の中の幼い本心が声を出して情けなくも有紗は許された気がした。

「好きだよ。」

もっと言って。

「有紗。」

もっと呼んで。

それだけで有紗の心は満たされていくような気がしたのだ。

「今日はずっと傍に居て。」

有紗の希望に答えて2人は有紗の部屋に戻ってきた。

何をするわけでもない、テレビを見ながら腕を絡めて寄り添っているだけの時間が欲しかった。

言葉は殆どなく有紗はただ大輔に寄り添い続けている、そして大輔も有紗の希望に答え続けた。

チェストの上には沢渡から貰ったタオルが置かれているが有紗は目もくれずに大輔に寄り添っている。

まるで自分の中の何かを満たすようだ。

しかしそれ以上の事は何もしようとしなかった。

キスもしない、だからそれ以上のこともない。大輔も全てを有紗に委ねていた。

「大輔。」

「なに?」

「…もう1回言って。」

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