私は彼に愛されているらしい2
力の無い声で求められるのは今日の中で何度も伝えてきたあの言葉だと大輔にはすぐに伝わる。

「好きだよ。」

テレビなんて付いているだけで少しも内容は頭に入ってこなかった。

輝く画面が瞳の中に映っていてもそれは鏡のようでただ映るだけにすぎない。

大輔の言葉を受けて有紗は今日何度目かの涙を静かに流した。

音が無くても大輔にも有紗の涙が落ちていくのが分かる、そしてその度に深く彼女を傷つけたことを思い知らされ心を痛めた。

「好きだよ。」

気持ちを伝えるだけで有紗が癒されるなら、満たされていくなら何度でも応えたい。

愛しいと思う気持ちが高まって言葉だけでは消化しきれなくなった。

空いている手で有紗の頭を撫でればよりいっそう体を預けて頬を擦り寄せる。

少しずつ重たくなっていく有紗に違和感を覚えて覗き込めば、いつのまにか有紗は眠っていたようだった。

ベッドに運んだ方がいいのだろうか。

そう考えたがこのままがいいだろうと大輔は膝枕をすることにして手を伸ばし自分の上着を有紗にかけようとする。

ちょっとの所で届かない上着に精一杯腕を伸ばせば体勢を崩してしまって有紗が前のめりに落ちそうになってしまった。

「うわっ…と、あぶね…。」

瞬発力の凄さで有紗を支えたがその時手にネックレスが絡んでまた別の意味で緊張してしまう。

何とか掴んだ上着を足下に置いて慎重にネックレスを外していく。

「…え?」

その時、大輔はネックレスに通されていた指輪の存在に気が付いた。

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