私は彼に愛されているらしい2
それは大輔が半ば押し付けるような形で贈った指輪だ。

丁寧に有紗を自分の膝にのせて上着をかける。すっかり疲れきって眠っている恋人の頬には涙の跡があった。

もう一度ネックレスを指に絡めて指輪に触れれば大輔の目が熱くなっていくのが分かる。

「ずっと…付けててくれたのか?」

前回大泣きしたときも指輪をしていないことに気が付いていた、だからもう駄目なんだと悔しくて情けなくて脅迫めいた別れない宣言をしてしまったのだ。

やり直したい。

やり直せるのだろうか。

希望についてまわる不安は拭えない、いつだって大輔は怖がっていたのだ。

また泣かれたらどうしよう。そうまでして自分の希望を押し付けても幸せにはなれないんじゃないか。

何度も考えては自分の欲に負けてきた。

やっぱり有紗を諦めたくなかったのだ。

面と向かって断られたら諦めよう、そう思っていても有紗がそんな判断をできる精神状態になかったことは今になればよく分かる。

日に日に有紗は自分を押し殺すようになっていたから。

そうしたのは紛れもなく自分だ。

「…ごめんな。」

何度謝っても足りる訳がない、これでは誰かにとられても文句は言えない。

気になっている人がいると分かった瞬間に体が冷たくなった。

半分は意地で否定したがもう半分は冷静に考えてもうまくいかないだろうと思っていたのは確かだ。

有紗はいま弱っている。

そんな状態から付き合いだして有紗が元の自分を取り戻したときはきっと波長が合わなくなっているだろう。

あくまで予想に過ぎないが願望もあってそう口にしたのだ。

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