私は彼に愛されているらしい2
「今日は泊まる。スーツだけ取りに行くからちょっと付き合って。飯はファストフードでもいい?」
「え?」
そう言いながら鍵を持って立ち上がる大輔に有紗は不思議そうな顔をして見上げた。
「移動しながら話が出来るし今日は一緒にいたい。やろうとしてることは学生みたいだけどな。」
ファストフードを食べながら計画を練るなんて確かに学生の頃よくやったことだと大輔の言わんとすることが有紗にも伝わった。
懐かしい記憶が呼び起こされてたまらず笑ってしまう。
「行こう。」
「うん。」
当然のように差し出された手を握って有紗も玄関へと向かった。
学生の頃と変わらない感覚がくすぐったい、でもあの頃と違うのはこうして手を繋ぐような関係になっているということだった。
プロポーズから始まって体を重ねてから明確に変わった筈の2人の関係は少しずれていたような気がする。
「大輔。」
呼べば振り向いてくれる、それも変わらないのに有紗は嬉しくて恥ずかしい、初々しい気持ちで満たされていた。
「何でもない。」
「うん?」
今、ようやく始まったような気がする。
付き合い始めの恋人同士の様なくすぐったい感覚に包まれて有紗は大輔の腕に絡まった。
幸せだと感じた。