私は彼に愛されているらしい2

2.女子の本音

翌朝、出社して最初に見た景色で有紗は立ち尽くした。

目指していた場所も目の前にあるのも自席の筈だ、なのによく知った顔がそこに堂々と座っている。

しかも不機嫌そうに腕も足も組んでいるとくれば、どこかしら緊張してしまうのはこれまでの経験からだろうか。

おそるおそる若干腰を曲げて窺いながら有紗はその場所へと近付いていった。

明らかに怪しいその行動、ふと目的の人と目が合って有紗は勢いよく姿勢を正し構えの体勢に入った。

「お、おはようございます!」

何の習性か我先にと有紗は挨拶を投げる。

その反応に悪い気がしなかったのか、意外な顔をしながらも彼女は軽く頷いて言葉を返してくれた。

「おはよ。」

「…舞さん。あの、そこ私の席ですよね。」

「そうよ。持田って書いてあるでしょ。」

舞が視線だけで示した先には机上に置かれたレターボックスに立てられている名札、そこには大きく持田と書かれていた。

良かった、席替えをした訳じゃない。一息ついて有紗は首を傾げた。

いやいやそんな安心をしている場合ではなく何故舞が不機嫌にそこに座っているかを有紗は聞きたかったのだ。

不安になりながらも少しずつ近付けば舞はゆっくりと立ち上がり有紗の方を見た。

それだけで背筋が伸びた有紗は完全に威圧されている。

「ちょっと顔貸して。」

真顔の台詞が有紗を引きつらせるがお構いなしのようだ。

「行くよ。」

「えっ!?ちょ…っええ!?」

すれ違い様に腕を組まれると有紗はそのまま舞に引きずられる形で大部屋から出ていってしまった。

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