私は彼に愛されているらしい2
これだけは違うかもしれない。

来たときとほぼ同じ様な形で歩く2人とのすれ違い様、沢渡は有紗の頭に手を乗せ微笑んだ。

「転けないようにね。」

今までとは違う優しい空気が一瞬にして有紗と沢渡を包む。

予想外の出来事に有紗が目を丸くしていると舞がわざとらしく声を出した。

「東芝くん。」

「えっ!?」

いい反応を示したのは有紗だ。

舞の言葉通りに出社したばかりでカバンを持ち大部屋のドアを開けようとする東芝が目に入った。

「東芝さん、おはようございます!」

大きな声を出すなり舞の手からするりと抜け出して有紗は東芝に駆け寄っていく。

「今日の予定なんですけど、見ていただきたい図面がありまして。」

「朝から何?席まで待てない訳?」

「あ、ご一緒しますよ。荷物持ちましょうか?」

「いらない。」

まるで飼い主に会った犬のようにまとわりつきながら大部屋に入っていく2人、その様子にため息を吐きながら舞もあとに続いた。

東芝と連れ立って大部屋に戻ってきた有紗を見た君塚はやれやれといった様子で舞に視線を向ける。

「話は終わりましたー?」

「見てたの?」

「朝から目立ち過ぎですよー?それであの師弟コンビはどうしたんですか、雰囲気が前みたいに戻ってますけど。」

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