私は彼に愛されているらしい2
そう言って君塚が視線を送った先には飼い主にまとわりつく忠犬のごとく有紗が東芝に絡んでいた。

ずっと一緒に仕事をしていてもここ最近は張りつめた空気が2人を包んでどこか緊張感が漂っていたのだ。

こうして仲睦まじい姿を見るのは久しぶりだと君塚も舞も目を細める。

「有紗が吹っ切れたんじゃない?今日の昼に話してくれるらしいけどね。」

「あはは、じゃあ舞さんのヤキモチ期間もようやく終わりますねー。」

明るく毒を吐いた君塚に言葉をつまらせながらも顔をほんのり赤く染めて舞は睨みを利かせた。

「気持ちが若くなって良かったじゃないですか。小中学生みたいな?」

「青いって言いたいのね?」

「大人の青春もいいですねー。」

「暫くは君塚さんの仕事を遠慮することにしたわ。」

「あはは、賄賂用意しときますー。」

何を返しても効かない君塚に見切りをつけると舞は遠くの自席にいたみちるの所に向かった。

道中ちらりと目を向ければ、有紗は東芝と共に手帳を持って出ていく所だ。

やはりその雰囲気も先週まであった緊迫したものは消えている。

仕事の山場も終えたのだろうか、舞は少し気になりながらもみちるに昼の事を伝えに言った。

そして昼休み。

前置きが衝撃的だったこともあり、舞はあらかじめ全員分の昼食を売店で買っておくと3人は屋上の隅で話すことにした。

今日も利用者は少ないらしい。

このありがたい状況を活用させてもらい3人は心おきなく有紗の話へと深く入り込んでいった。

「と、まあ…ざっくり言えばそういうことです。」

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