私は彼に愛されているらしい2
「デートってことよね。いいじゃない、楽しんできて!ねえ、舞さん。」

「あ、ああ、うん。そうね!美味しいものでも食べてきてよ。…にしても、予定っていうからてっきり…。」

「え?」

「え?あ…いや、東芝くんとブツブツ相談でもするのかなって。」

手首から先をヒラヒラと揺らしながら笑う舞に有紗は目を細める。

「ブツブツ相談って…真剣にやってるんですよ。」

「まあそうだけどね。とにかく仕事じゃないならいいわ。で、いつにしよっか。金曜日は?」

「金曜なら大丈夫です。みちるさんは?」

「私も空いてます。」

3人の予定が合うとそれだけで自然と笑みが浮かぶから不思議だ。

「じゃあ今から先輩に電話してきますね。」

そう言うと有紗は立ち上がって少し離れた場所で西島に電話をかけ始めた。

明るい口調はとても言い合いをした相手と話すような雰囲気ではない、噂とは違い関係は悪くないようだと舞もみちるも静かに理解した。

「舞さん。」

視線は有紗に向けたまま、みちるが静かに舞に呟く。

「何?」

「さっき有紗の予定を聞いて…沢渡さんと出かけるって思いましたね?」

そう問いながら向けられたみちるの視線から舞はするりと抜けだした。

また早とちりだと叱られるのだろうか、最近は諭されたりとみちるに抑えられることが多い。

居心地の悪さにもぞもぞするが逃げられる訳もないので舞は不貞腐れながらも小さく抗議した。

しかしみちるの顔を見た瞬間にその心も折れる。

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