私は彼に愛されているらしい2
「私は別に…。」

「私は少し疑ったんですけどね。」

「えっ!?」

「気のせいだといいんですけど…沢渡さんの方が盛り上がっている気がして。有紗もまんざらではなかった筈ですから。」

パンを頬張りながら離れた場所で西島と会話をする有紗を見つめて表情を曇らせた。

悪い予感がするのだろうか、眉を寄せて唸る姿はみちるにしては珍しい。

「まあ…私たちが口を出すことじゃないですね。今の有紗は大輔くんの方に向いてますから。」

「あんた、さりげなく私に釘をさしたでしょ。」

「えー?」

視線を宙に逃がしたままみちるは首を傾げて惚けた。

やはりアンテナをはっている舞には少し含んだだけで思いが伝わるらしい。

「言われなくても今回は黙ってるわよ!」

不貞腐れながらも言い返した舞の声は照れが混じっていた。

そこに気が付いたみちるは思わず微笑んでしまう。

そうこうしている間に有紗は最後の言葉を西島に向けながら戻ってきていた。

「はい、ではまた。」

通話を切ると同時に眉を上げて息を吐く、そんな有紗をみちるは笑顔で迎えた。

「おかえり。」

「西島何だって?」

「お2人共、金曜でいいそうです。動くのが遅いって怒られました。」

肩を竦める様子から電話の半分以上が文句だったに違いないと舞もみちるも苦笑いをする。

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