私は彼に愛されているらしい2
「でも場所決めは全部やってくれるらしいので、後は先輩からの連絡待ちになりました。」

「おおー。」

「あの西島を動かすなんて…あんたって本当に要領がいいわね。」

「えー?怒られただけですよ?」

「でも仕事は減ったじゃない?それはお利口だったかも。」

「みちるさんまで…。」

自分の意に反した展開だったにも関わらず褒められると素直に喜べないものだ。

特に褒められた気がしない言葉だと何だか気持ちが悪くて少し不貞腐れたくもなる、それに気付いたのかみちるはまだ袋の中にあって外に出していなかったデザートを有紗の前に差し出した。

「はい。企画ありがとう。」

ランチに食べやすいミニサイズのバナナクレープに有紗は目を輝かせる。

「やった!みちるさん、ありがとうございます!」

「うーん、というか西島楽しみにしてるのか。ちょっと意外かも。」

「楽しくなりそうですね。私も待ち遠しいです。西島さんて実は面倒見がいい人ですから。」

自分たち用にも用意していたクレープを手に取ると舞とみちるも幸せそうに頬張り始めた。

今まで積極的に関わり合わなかった人物との交流は少しの緊張と少しの期待が交差して胸が高鳴る。

まさにその感覚を体験しながらそれぞれが金曜に思いを馳せた。

西島から場所が決まったと連絡があったのはその日の夜の事、すぐに対応した彼女の素早さに3人共笑みをこぼしたのだ。

そして、水曜日。

有紗は定時間近になると慌てて書類の片付けを始め今日の仕事のまとめにかかった。

その様子に首を傾げながら見守る東芝には約束があると小さく告げる。

呆れたようなため息を吐かれると、楽しい夜をと送り出しの言葉を貰えたのだ。

< 265 / 304 >

この作品をシェア

pagetop