私は彼に愛されているらしい2
まず起こったのは疑いの感情、そして探りを入れるように目を細め、照れた横顔を見て真実味が増すと次に襲ってきたのは恥ずかしいと言う感情だった。

それは嬉しいにも似た何ともくすぐったいもの。

「あ…そう、なの。」

お互いに何を話していいのか分からなくなり、他人は絶対踏み入れたくないような空気を漂わせて車は走り続けた。

会話が見つからないまま辿り着いたのは2人がよく訪れていたリーズナブルなイタリア料理店、残念ながら明日も仕事の為アルコールはお預けだ。

平日、しかも週中の仕事帰りにご飯を食べに行くなんて何だか分からないけどくすぐったい感覚に包まれる。

「ねえ、何か恥ずかしいね。」

通された席に着くなり有紗は声を潜めて大輔に問いかけた。

その言葉の意味が理解できなかった大輔は表情でどういうことかと訴える。

「だって週中だよ?あの人たちデートしてるって思われないかな。」

周りを視線だけで気にしながらさらに声を潜める有紗に大輔は瞬きを重ねた。

正直に言うとまだ有紗の言いたいことは伝わっていない、しかし彼女が何かを思い落ち着かないのだという事はよく分かった。

「別にいいだろ?デートなんだから。」

とにかく思いついた事を口にしてみよう。そんな思いで出した答えは有紗の想像しないものだったらしい。

驚いて固まっていたかと思うと急に顔を真っ赤にして肩を竦める。

「そ…っか。そうだね、そりゃそうだ。」

思えば自分からデートがしたいと言い出したのに何を口走っているのだろうと余計に恥ずかしくなってきた。

それ以上に今、大輔とデートをしているという事実を抱えて恥ずかしくなってしまったのだ。

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