私は彼に愛されているらしい2
「…おい、何だよその反応は。こっちも恥ずかしくなるから止めろ。」

「いや、ちょっと…すぐには無理かも。」

「いいからメニュー選べって!」

互いに照れながら掛け合う様は見ている方が恥ずかしくなる位に甘い空気を放っている。

それを自分たち自身も感じているだけに余計気持ちが冷静になりにくかった。

水を飲んで深呼吸をしてメニューに集中して、少し頭が冷えたら今度は可笑しくなってくる。

「あはは。何やってるんだろうね、もう10年近い付き合いなのに。」

「全くだよ。いいから早く選べ。」

「はーい。」

そう、付き合いは長く10年が経とうとしていた。

どういう節目か友人から関係性を変えた2人はまた1つの山場を乗り越えて向かい合っている。

メニューを見るフリをして有紗はふと大輔の方を盗み見た。

出会った頃から比べると当然容姿に変化は出てきている、あの頃の様なハリも無ければ大輔の出す雰囲気は落ち着いた大人の物になっていた。

でも本質的なところは変わっていない。

まだ答えを出すには早いと自分で自分を諭してもやはり今感じていることが自分の中の揺るがないものだと思えるのだ。

クールなように見えて実は熱い男。

淡々とこなすように見えて実は努力家。

落ち着いた雰囲気から物事を頼まれやすいがかなりの面倒くさがり屋で引き受けない男。

余程の事が無い限り自分から進んで手助けをしない少し薄情な男。

それでも周りからの信頼を得やすいのは裏表がないまっすぐな正直人間だから。

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