私は彼に愛されているらしい2
「焦ってた。」

婚約や結婚でぎくしゃくした時の心情を大輔はこう語っていた。

きっとそれが大輔の歩みが止まらなかった原因、それに尽きるのだろう。

少し時間を置いて心に余裕を持って考えればすぐにその言葉の信憑性があると納得できた。

それだけの時間を共有してきたのだ。

「決めた?」

有紗の視線に気が付いた大輔はそう尋ねた。

その表情はもういつも通りの大輔に戻っている。

「うん、デザート付のセットにする。」

「じゃあ店員呼ぶか。」

呼び出しのベルを押して大輔はメニューを机の上に広げたまま置いた。

店員が来るまでの間に有紗が選んだものを確認してオーダーをしていく。

何てことない日常の風景、何てことないワンシーンの中で温かい気持ちが生まれていくのを感じた。

「ありがとう。」

注文をしてくれたことにお礼を言えば短い返事が聞こえる。

「…何笑ってんの?」

「うん?早く来ないかなーって。」

「どれだけ腹ペコなんだよ。」

咄嗟の誤魔化しも今のは許されるだろう。

今ここにいることが幸せだと感じた、それを伝えるのも恥ずかしくてまだ秘密にしたいのだ。

隠し事ばかりが増えていく。

胸元に手を当てれば服の下に隠れている指輪の存在が感じられた。

後ろめたさのない秘密は大切な要素なのかもしれない。

そんなことを思い有紗はまた頬をゆるませ笑顔を見せた。

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