私は彼に愛されているらしい2
「…はい。凄く嬉しいです。」

「一応答えを聞いてもいいかな?」

「勿論、辞めるつもりはありません。続けたいです。いつか結婚したとしても、私は続けたいです。」

「そうか。」

言葉と思いを受け止めてくれたチーフに有紗は微笑んだ。

心が温かい、東芝の事を思うだけでいつまでも泣いてしまいそうになる位感動して震えていた。

見放さずに手元に置いてくれるという事は、自分が少しでも可能性を持った仕事が出来ていたのだと信じたい。

「…ところでその指輪。本当に東芝くんからの贈り物じゃないよね?」

「あはは。違います。同級生の恋人から貰いました。」

「持田さんは人気があるからな。指輪を外しただけで若い男が騒いでるんだよ。勿論つけ始めた時もね。」

「皆さん意外と見ていますからね。」

「まあとにかく続ける意思があって助かったよ。次の車両では補助なしの立派な戦力だから気合入れて頑張って。東芝くんがチーフになるから。」

「はい。」

差し出された書類には新しく担当する車両の大まかな日程が書かれており、担当者の名前もズラリと載せられていた。

今回同じ車両を担当していた半分の人間がスライドで移動するような形だが、そこに沢渡の名前は無い。

ここでチーフに尋ねるのも不思議に思い有紗は深々と頭を下げて会議室を後にした。

その日からはもうただひたすら身辺整理に明け暮れることになったのだ。

担当車両が変わるとなれば部屋も移動することになる、新しい場所は隣の棟になり舞やみちるたちとも離れることになった。

しかし階は同じな様で渡り廊下を行けばすぐに会えることからこれからも交流は続いていくだろう。

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