私は彼に愛されているらしい2
「もう少しで別の車両に行っちゃうでしょ?打ち上げというかさ、親睦を深める時間を作りたいなと思って。」

「親睦…?」

「そ。解散飲み会、いつ開けるかまだ分からないらしいからさ。」

次の担当によっては開催されても参加できないかもしれない、そう続ける沢渡に有紗は少し考えてしまった。

いま同じ担当しているメンバーの半分は有紗と同じ場所に行くが、他のメンバーはバラバラになる筈だ。

半数のメンバーが存在する車両はきっと全員が参加できるだろうがそれ以外は負荷が高い部署になれば参加出来なくなる。

「沢渡さんは次どこに行くんですか?」

「俺はね、特殊車両なんだって。だから本部の方へ出向になる。」

「出向!?」

有紗たちの会社の親である大手車両メーカー内に出向する、それはよくある話ではあったがまさか東芝に白羽の矢が立つとは考えもしなかった。

可能性としては十分にあり得るが、周りと同じ様に社内の別の車両に行くとばかり思い込んでいたのだ。

「希望はあったから嬉しかったけど、まさかで驚いた。これからはもっちーとも会えなくなるね。」

突然の報告に有紗は言葉も出ない。

おめでとうというべきなのか、頑張ってくださいというべきなのか、とにかくまだ驚きの方が勝っていた。

しかし本人は希望があったと言っていたのだ。

「…おめでとう、ございます。頑張ってくださいね。」

「うん、ありがと。」

「いつからですか?」

「もっちーたちより少し遅いかな。再来週の月曜から。」

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