私は彼に愛されているらしい2
有紗の謝罪の言葉を最後に車の中にも無言の空気が流れた。
空しくかかるのはオーディオからの音楽、しかしその軽快な音さえも耳に入らない程気まずい空気が漂っている。
出場所を間違えた防犯ベルは失礼しましたと言わんばかりに元の場所に戻り蓋をするようにカバンに両手を乗せた。
「…帰ろっか。」
「…はい。」
暫くの沈黙を終えて沢渡はクラッチを踏み込みギアを入れる。
サイドブレーキが下りる音が響くと車は独特の重低音を鳴らして走り出した。
「きみも魔性の女だね。」
車を走らせながら沢渡がしみじみと呟く。
「それって褒め言葉じゃないんですよね?」
「半分は嫌味も込めてるからね。」
半分という言い回しにどう反応していいのか分からず有紗は苦笑いを浮かべて答えた。
大きなため息が沢渡から聞こえてきたが声は可笑しそうに弾んでいるように思う。
「変質者扱いされるし。」
「それ!…それは沢渡さんが男扱いしてないって言うから!」
「さすがに防犯ベルは無いでしょ。」
何度も突き付けられる単語にさすがの自分の判断に迷いが出てきた。
もしもの時にはこれしか無いとは思っていたが、出す場面を間違えてしまったのだろうか。
「そう言われると…なんか違う気はしてきましたけど…でも私は沢渡さんを男の人だって見てましたよ?」
「へー。」
空しくかかるのはオーディオからの音楽、しかしその軽快な音さえも耳に入らない程気まずい空気が漂っている。
出場所を間違えた防犯ベルは失礼しましたと言わんばかりに元の場所に戻り蓋をするようにカバンに両手を乗せた。
「…帰ろっか。」
「…はい。」
暫くの沈黙を終えて沢渡はクラッチを踏み込みギアを入れる。
サイドブレーキが下りる音が響くと車は独特の重低音を鳴らして走り出した。
「きみも魔性の女だね。」
車を走らせながら沢渡がしみじみと呟く。
「それって褒め言葉じゃないんですよね?」
「半分は嫌味も込めてるからね。」
半分という言い回しにどう反応していいのか分からず有紗は苦笑いを浮かべて答えた。
大きなため息が沢渡から聞こえてきたが声は可笑しそうに弾んでいるように思う。
「変質者扱いされるし。」
「それ!…それは沢渡さんが男扱いしてないって言うから!」
「さすがに防犯ベルは無いでしょ。」
何度も突き付けられる単語にさすがの自分の判断に迷いが出てきた。
もしもの時にはこれしか無いとは思っていたが、出す場面を間違えてしまったのだろうか。
「そう言われると…なんか違う気はしてきましたけど…でも私は沢渡さんを男の人だって見てましたよ?」
「へー。」