私は彼に愛されているらしい2
「いいお父さんになりそうだなって、そう思ってましたから。」

「今度はそっち?それも男として見てないじゃん。」

「そうですか?そうは思いませんけど。」

有紗の当然のような物言いに投げやりモードだった沢渡は気持ちを切り替えた。

少し拗ねていた心に生まれた興味はその理由を求めている。

またも肩透かしをくらいそうだが聞いてみる価値はあるかもしれないとその好奇心を打ち出した。

「理由は?」

「沢渡さんも私も年齢的には結婚を意識してもおかしくないじゃないですか。相手にいい奥さんやいい旦那さんを求めることもあると思うんです。」

「そうだね。」

「授かりものなので望んで得られるものではないけど、子供が欲しいという日もくると思います。その時女性側が相手に求めるのはいいお父さんであるかですよね。だから、いいお父さんになるかどうかは鍵になると私は思います。」

有紗の言葉を聞いて沢渡は考える。

確かに過去に付き合った女性の中で、これだけは親にも会わせられないし結婚なんて出来る筈もない相手がいたのは事実だ。

そして年を重ねるにつれ相手に求めるものが少しずつ変わってきていることも知っている。

顔だけで選んでいた時期とは違い、相手に家庭的な部分を求めるようにもなってきた。

なにより精神的に自立できているのかを見るようになったのだ。

それが所謂しっかりと母親になれるかということだろうか。

だとすれば有紗の考えに同意する訳だが、沢渡はどうにも腑に落ちなかった。

「でもさ。それってやっぱり入り口にするにはおかしくない?いきなり相手に父親を求めないでしょ、最初は2人で始めるもんなんだからさ。」

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