私は彼に愛されているらしい2
車が暗闇を走る中、車内の討論は少しずつ熱を持つようになる。

有紗の熱弁に対し沢渡も自身の思いを口にし、また有紗も反応を見せた。

「そうですか?」

「そうでしょ。だって2人で過ごしてからの子供じゃん。最初からいいお父さんになれそうとか思ってる相手と寝れる?キスしたいとか触りたいとか触ってほしいとか、異性として見れるかなんてそこでしょ。」

「そ!…れは、そうですけど。」

「やっぱりパートナーは異性であるべきで、親が先に立っちゃ違う形で落ち着きすぎると思うよ?子供が出来る前なら尚更ね。」

生々しい例えに怯んだものの、やはり有紗は納得できなくて小さく唸る。

「でもこんな人じゃ父親になれない!って人とは結婚したくないじゃないですか。」

「そこだよ、恋愛と結婚の違いは。」

「どういうことですか?」

「まず相手を見て、異性としての魅力を感じた先に家庭を築く未来を思う訳じゃん。それが大多数の恋愛の仕方だよね?」

沢渡の言葉に有紗は理解の声と頷いた。

「相手に父親像を強く見るってことは、恋愛色の方が薄いってことでしょ。異性の先じゃなくて異性そっちのけって感じ。伝わる?」

「…はい。」

「いいお父さんになりそう、そんな相手にドキドキもなんもしないでしょ。安心感を求める年頃でも…多少のトキメキは必要なんだって。」

「でも、私も沢渡さんを意識したことありますよ?」

もうこの話は終わり、そんな意味を込めて出した言葉にまだ食らいついてくる有紗へ苛立ちさえ覚えた。

一体どこまで人をコケにしてくれるんだと泣きたい気持ちにもなる。

< 290 / 304 >

この作品をシェア

pagetop