私は彼に愛されているらしい2
「私より背も高くて、大きな手で、力強くて…ああ、男の人なんだなって思いました。」

「何それ、殺し文句。普通たった今断った相手に対していう言葉か?」

「だって沢渡さんが信じてくれないから!」

「だからってさ…本当、男の敵。きみの彼氏も大変そうだね。」

自分でふった話とはいえいい加減に切り上げたいし早く解放されたかった。

ここまで彼女は譲らない性格だったろうか、いやそうでないと男共の中では仕事していけないだろう。

どのガッツには称賛を送りたいが今ここで発揮して欲しくは無かった。

これが東芝の認めるメンタルの強さだ。

そこは大いに認めたい、仕事に関しては。

「どうでしょう。友人としての付き合いも長いのでなんとも。お互い様ですよ。」

「あっそ。きみらの事情は別にどうでもいいや。聞きたくもない。」

ほとほとうんざりし疲れたところで車は目的の駅に辿り着いた。

自転車が置いてあるというので有紗はここで降りることになる。

「じゃあね、もっちー。また明日。」

「はい。ありがとうございました。お気をつけて。」

有紗を見送った後、ロータリーに停めたまま沢渡は携帯を取り出して電話帳の中から選び抜いた相手の情報を睨んだ。

この人物にコンタクトをとる方法はこの番号にかけるしかない。

「はあ。」

大きなため息を惜し気もなく吐いてやれば半ばやけくそな気持ちで発信ボタンを押した。

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