私は彼に愛されているらしい2
この人に自分からかけるのは初めてじゃないか。

そんなことを考えていた4コールめでついに電話が繋がる。

「もしもし、沢渡です。…何ですか、機嫌悪いですね。」

「夜分遅くにすみません、位の詫びはねえのか。」

「夜分遅くにすみません。」

電話の向こうの相手から低い声で対応されるが沢渡は不満に思うどころか嬉しくなった。

「で、何?」

「今度飲みに行きませんか?聞いてほしい話がいっぱいあるんですよ。」

「ああ?」

「簡単に言うと失恋のヤケ酒に付き合ってほしいって話です。東芝さん。」

ながら作業で面倒くさそうに相手していたであろう東芝は沢渡の言葉に息を飲んだ。

ほんの少しの間を置いて反応を見せた呟きは感心にある音だったことに少し安心する。

「へえ。それはそれは。」

「空いてる日、教えてくださいよ。」

車の中で沢渡が東芝との会話を楽しんでいる頃、有紗は自転車に乗り自宅へと向かっていた。

風を切りながらぼんやりとさっきまでのやりとりを思い出す。

1つ大きな疑問を抱いて有紗自身も首を傾げていた。

どうしてあの時あんな風に答えてしまったのだろう。

少し考えたけどでも自分でも思うよりすんなりと出てきた言葉の様な気がする。

自分の気持ちをもう一度振り返ってみて有紗は向き合ってみた。

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