私は彼に愛されているらしい2
「結婚するの?」

そう沢渡に聞かれた有紗はそうだと頷いた、それはその場しのぎの答えではない。

大輔を選んだ理由も少しずつ明確になってそれは大きな気持ちの変化へと繋がっていくのだ。

ああ、そうか。

納得する声を胸の内で呟いて有紗は空を仰いだ。

空には星がいくつも瞬いて生きている。

「大輔。」

囁いた名前は届くことなく夜の空へと吸い込まれていった。

でも、届けたい。

有紗はぼんやりとした目に力を宿すと部屋に辿り着くなり大輔に電話をかけた。

今日は木曜日で普段は有紗でもまだ働いている時間帯だ。

出るだろうか。

あまりかけない電話に少しずつ不安になり、耳元で鳴り続ける呼び出し音は緊張を増していった。

5コール目、7コールになったら切ろうと携帯を握りしめる。

6コール目。

「はい、もしもし。」

半分以上諦めていたところに大輔の声が響いた。

「有紗?」

「あ、もしもし!仕事中にゴメン。」

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