私は彼に愛されているらしい2
本来仕事中であれば私用の電話に出ない主義の2人だ。

かけたくせに取らせてしまった事に後悔した自分に理解できない。

「いや。どうした?」

話せる場所に移動してくれているのだろう、大輔の足音と風を切る音が聞こえてきた。

声の響き方も少しずつ変わってきている。

「あの、さ。ごめん、大したことじゃなくって。っていうか、別に今じゃなきゃいけない事でもないんだけど。」

「うん。」

心臓がいつもより大きく痛い位に強く跳ねている、息苦しくなる位に緊張してきた。

言いたいことはあるのにそれに繋がる言葉が出てこない。

いつかの大輔もこんな気分だったのだろうか。

そんなことを思いながら有紗は深呼吸をして自分を落ち着かせる。

大丈夫、たった一言だ。

「大輔。」

「何?」

覚悟はもう決まった。

「私と結婚してくれる?」

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