私は彼に愛されているらしい2
これはつい先日したばかりのデートでの話。

結論から言うと総合評価としては彼は悪くは無かったのだ。それなりの顔立ち、それなりの洋服センス、それなりの収入、それなりのトーク力、そして合わなくもない雰囲気。ここまで無難にいけば既に申し分ない人であると言えるだろう。

このまま付き合ってみるのもいいかもしれない。

そんなことを考えながら初めてのデートをしていた時だった。

どうにも聞き逃すことが出来ない言葉を彼が発したのだ。

「だって…俺が守るなんて言われたから冷めちゃって。」

「…はあ?」

バツが悪そうに呟くと、しっかり声を拾っていた舞が怪訝な表情で更なる情報を求めてくる。それをきっかけに有紗は開き直って訴えを始めた。

「何それって思いません?俺が守るですよ?何から?誰から?私狙われてる?もう意味分かんない!」

あくまで小声で、それでも盛り上がっていく気持ちが治まりきれずに有紗の手は大げさに忙しく動く。その顔は心底信じがたいという訴えを出しているのに、それに向かい合っている舞は遠慮なしに目を細めて呆れていた。

そして盛大なため息を一つ、これ見よがしに長く落として口を開く。

「うーん、まあ、いきなり言われるのもどうかと思うけど。」

「ですよね!?」

「でもあんたソレ…相手が不憫よ。」

「…は?」

額に手を当て頭が痛いと言うポーズを取ったままの舞がぼやくと、有紗は理解できないと言わんばかりに口を開けて固まった。

それをちらりと視線だけで確認してまた舞はため息を吐く。

「守ってくれるって言ってくれたんでしょ?」

「はい。」

舞の言葉そのままを受け止めて頷く有紗に頬が引きつった。その様子だと本当に理解していないのだろうと安易に予想が付いて舞はまた1つ、今度は唸りを交えた小さなため息を吐いて曲がっていた背中を伸ばす。

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