私は彼に愛されているらしい2
「研修って延びるものですか!?」

「さあ。でも課長曰くバージョンアップが上手くいかなかったのと、ついでに隣の室に来た新しいトレース業務の子の教育をするみたいよー。特に忙しい時期でもないし、いいんじゃないかって許可したみたい。」

「そんな…。」

期待していた分、叶わなかった願いが有紗を呆然とさせる。ただ寂しいだけの雰囲気ではないことに気付いた君塚は不思議そうに首を傾げて見ていた。

「忙しかった?」

「いえ、そういう訳では。」

「清水さんは水曜に復帰らしいよ?」

「えっ!?本当ですか!?」

聞くなり有紗は少し離れた場所にあるみちるの行先掲示板を見る。ここからじゃ見えないため、雑に荷物を置いて小走りでそこへ向かった。

君塚の言う様に清水みちるの欄には研修は火曜日までと書いてある。その文字を見た瞬間に有紗は無意識にガッツポーズをしていた。

「みちるさんは水曜日!よしよし!」

本当なら今すぐに聞いてほしいくらいだが舞の金曜復帰に比べたらみちるの水曜復帰はかなりありがたい。そこまで頑張れば何とかなるかもしれないと有紗は自分を奮い立たせた。

自席に戻ればさっき見て見ぬふりをした図面の修正指示がこれでもかと置かれている。

「…また修正か。」

修正続きで落ち込むのはお門違いだと分かっていても肩を落としてしまう自分が情けない。自分のミスだ、そう認識している分気持ちが沈んでしまった。

とはいえ、そんなことに時間を使っている暇はない。

気持ちを切り替えると有紗はすぐにCAD端末を起動させて図面の修正に取り組んだ。暫くすれば東芝鬼教官が出社してくる、それまでに修正図面を出せれば優秀だ。

気合を入れて腕まくりすると有紗は目の前の業務に集中した。そしてなんとか東芝の机に修正図面を置いたところで鬼教官がやってくる。

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