私は彼に愛されているらしい2
「有紗!食堂いこう。」

「は、はい。」

待ちに待ったこの時間だったが妙な緊張が胸を締め付けて複雑な気持ちになる。そうだった、みちるも言わば同じ様な状況下に置かれているのだと今さらながら気が付いたのだ。

自分のことばかりでそこまで頭が回っていなかったが沢渡の言う通り2人はどうなんだろうか。そこまで考えて有紗の思考はまた停止した。

そういえば大輔からの連絡はまだない。

「あらら。この空気なんだか久しぶり。」

「一週間ぶりですもんね。今日は混んでるな。」

食堂ではいつにも増して混雑しており、いつものように2人は個々にメニューを選びに行った。先に食事を確保できたのは有紗の方で、空いている席に腰かけるとおもむろに携帯を取り出す。

着信以外に画面を見ることもなかった携帯はやはりダイレクトメール以外の受信は無かった。

「…ちょっと寂しいかも。」

友人からも家族からも連絡が入らないというのも悲しい事実だ。メールが来ても忙しいから返せなかったとか言ってみたかったが今回はそうでもないらしい。

メールが来ていないということはつまり。

「音沙汰なし、か。」

大輔という名前を口に出すのが躊躇われて飲み込んだ。

あの時あんなことをしておいて何の連絡も寄こさないとは一体どういうつもりなんだか。

胸の内で悪態をつくと携帯を持つ手に力が入る。

「どしたの、眉間にしわ寄ってるよ?」

不思議そうな声を出すみちるの存在に有紗はようやく我に返って姿勢を正した。今日もみちるはランチセットにしたらしい。

思いの外がっつり食べるみちるに有紗は最初の頃感動していたのも懐かしい話だ。

「何か嫌なメールでも来てた?」

手を合わせてご飯を食べ始めるみちるに有紗は苦笑いをする。

何のメールも来ていないことが嫌なことになるんだけどな。

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