私は彼に愛されているらしい2
有紗の頭の中がほんの数秒で目まぐるしく後悔で渦巻いていたことなどつゆ知らず、みちるはのんきな声を上げながらハッキリと答える。

「えー?そんな予定ないよ?」

「へっ?」

「どうしたの、何かあった?」

「えっ!?」

同じ職場で年頃の2人が付き合ってもまだそんな話が出ていないことに驚いたのもつかの間、みちるの直球が有紗に刺さって思わず手元に置いた携帯に視線をやってしまった。

「あ、いや、今ってちょうど結婚式が多い時期じゃないですか。去年の今頃凄かったなって。」

「確かにそうかも。秋って気候がいいからかな。」

「ジューンブライドって言っても梅雨だと敬遠しちゃうんですかね。」

「ガーデンはやりにくいかもね。そういえばもうすぐ結婚式あるな。」

「私も来月あります。」

そう言いあうとどちらともなく微笑んで再び料理に手を付ける。有紗はこっそりみちるを盗み見して心の中で思った。

見た感じではマリッジブルーという訳ではなさそうだが、恋人がいる適齢期の女性にはデリケートすぎる質問だったとやはり反省してしまう。

気心知れた仲ではあるが、みちるは職場先輩だ。その辺りのことは忘れないようにしないと慣れ親しみ過ぎるのもよくないと有紗は考えている。

言いたい、聞いてほしい、でも全てをさらけ出すにはやはり少し気を遣ってしまう。

「ふふ。やっぱり舞さんがいないと静かだ。」

有紗の気遣う雰囲気を察したのかみちるは滅多に言わないセリフを口にした。

みちるのやさしさだと感じて有紗は情けなくも嬉しく思う、そこでやっぱり考えてしまうのだ。みちるに愛されている竹内は幸せ者だと。

そして素直に、いいな、とそう思えた。

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