私は彼に愛されているらしい2
「私はみちるさんといる空間が好きですよ。」

「そう?」

「はい。…今度、話を聞いてくれますか?」

瞬きを重ねみちるは少しの間を置いてから微笑んだ。その表情はとても優しく彼女の人柄を表しているようで有紗も微笑む。

「いつでもどうぞ。私は恋人よりも友達優先です。」

少しだけ前屈みになり声をひそめた。その仕草が可愛らしくて思わず吹き出してしまう。

「私、竹内さんに勝ちましたか?」

「秘密ね。」

少しだけ軽くなった心は食欲を戻してくれたようだ。有紗はさっきまでとは変わって軽やかにフォークを手にすると幸せそうに頬張り始めた。

舞を待とう。それからみちるにも話そう。

そうと決まれば金曜日まではまた仕事に打ち込む必要がある、いや、そうでなくても忙殺されそうな勢いだ。こちらが気合をいれなくても自然と突っ込んで週末を迎えるのが流れだろう。

「午後からもやるか。」

「頑張れ。」

独り言の囁きに労いの言葉をかけてくれたことが嬉しくてくすぐったい。

有紗の予想通り、見事に仕事にまみれていつの間にか金曜日を迎えていたのだ。




「っ舞さーん!!」

金曜の朝、出勤するなり有紗は舞の所に駆け寄ってとりあえず抱きついた。

以前予想した通りに留守を長くした舞は案の定早めの出社をしてきている、まだ数名しかいない静かなオフィスに有紗の声は異様に響いた。

「なーにー?ちょっと朝からやらしいな。」

嫌がらずにからかう感じで舞は抱きついたままの有紗の背中をつんつんとつつく。

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