私は彼に愛されているらしい2
「会いたかったんですー!寂しかったんですー!助けてほしかったんですー!!」

興奮の治まらない有紗は集まりつつある人目も気にせずに力を込めて舞にしがみついた。舞の自席で繰り広げられる突発劇場に騒ぎを見に来た君塚が首を傾げる。

舞は君塚と顔を合わせて笑っているようだった。

「熱烈だねー。」

「そんなに仕事降ってきたの?」

ふるふると舞のぬくもりを確かめる有紗をよそに君塚と舞は会話を進めていく。舞の問いかけに君塚は眉を上げて肩を竦めると少し距離をつめて有紗に話しかけた。

「話したいことがあるんだって。でしょー、持田さん。」

その言葉に反応した有紗は勢いよく体を離して舞の両腕をしっかりと掴む。そして泣きそうな表情で口元に力を入れながら見つめた。

「え、なに?」

ただならぬ様子にさすがの舞も引き気味で構える。

「たすけてくださいー!!」

しっかりと発音できなかった声はまるで言葉を覚えたての子供の様だ。有紗の叫びに驚きながらも舞は少し間の抜けた有紗に笑っていた。

「あはは。分かった分かった、助けたげるわよ。その山の何から手を付ければいいの?」

「え?山?」

声の誘われるように自分の机を見て有紗は固まる。確かにあった山。

「山!?」

確かな存在感に拒絶を表情に出して触れてみるが、大きさの原因は大きな図面を折りたたんであったからであると気が付いた。それでも図面は1枚じゃない。

「あ!間違えてる!!」

縮図ではない大きさはこれが正式に提出されるものだという証なのだが、そこにガッツリと赤色で修正点が記入されていた。記入者は疑うまでもなく東芝だと分かっている。

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