私は彼に愛されているらしい２
「おはよう、もっちー。」

「おはようございます。」

「ちょっとー。若い子に手を出さないでよ？」

前を歩く舞から声がかかるが沢渡は苦笑いしながら誤解だと手を振り会議室の中へ入っていく。姿が見えなくなると舞は声を潜めて有紗に問いかけた。

「ね、今の話みちるには言ったの？」

「いえ。…みちるさんが結婚で悩んでいたらとか余計なこと考えて言いづらくなって言えてません。」

「みちるはそんなこと気にしなくても大丈夫な子よ。昼休みにも聞いてあげるから今はとにかく仕事に集中して。」

「…はい。」

大部屋に戻ると席を外していた10分ほどの間に多くの人が出社したようで賑わいを見せていた。その中で目立っていたのが有紗と向かい合わせの席である教育係の東芝だ。

来たばかりの彼は机の上に鞄を置いたまま図面を睨んで仕事モード全開になっている。

「おはようございます、東芝さん。」

「おはよ。どこ行ってた？」

「緊急女子ミーティングよ。」

少し不機嫌さが見える東芝から有紗を守るように舞が横から口を挟んだ。願ってもない人物の登場に東芝の表情が少し和らぐ。

「吉澤さん、復活しましたか！」

「先に有紗の図面修正をやっちゃうから、東芝くんの依頼はその後にしてね。」

「さすが。準備しておくんでお願いします。」

「はーい。」

そう言うなり舞は有紗の机の上にある山のような図面を1つずつ確認しながら抱えていった。自分で出来るかどうかを確認しているらしい。

東芝のチェックは修正個所がいくつかを数字で表してくれているのですぐに取り掛かりやすいのだ。

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