私は彼に愛されているらしい2
「全部貰えそうね。」

「ありがとうございます。」

「そっち頑張ってよ?」

「はい!」

力強いサポートを受けて有紗は残された設計図面の作成に取り掛かる。

補助があってか有紗は集中して図面作成に取り組むことが出来、そのおかげで昼前にはチェックに出せるところまできた。縮小図を出力して東芝に提出したところでお昼のチャイムがフロアに流れる。

「ちょうど昼だな。見とくから行っていいぞ。」

「はい。ありがとうございます。」

あとは東芝のチェックを通れば正式図として出力すれば完成だ、まだ終わりではないがひと段落ついたことに有紗は短く息を吐いた。

「有紗、こっちこっち!」

自席に戻る途中で舞の呼ぶ声がする。顔を向けると白いビニール袋を掲げた舞とみちるが笑顔で手を振っていた。

「ご飯、買ってきたから行こう。」

「おいてくぞー!」

「え?あっ待って、舞さん!みちるさん!」

慌てて追いかける有紗に反応したのはみちるだけで舞は調子よくどんどん先に進んでいく。

「お茶も買ってあるからね。舞さんが人の少ないところでピクニックしようって。」

「ピクニック?」

「有紗、話があるんだって?」

そう言われて有紗は口を開けたまま固まった。

確かに少しだけ朝に話したが、まさかこんな展開になるとは予想していなかったため呆気にとられる。というよりも他所事を考える余裕なんて午前中の有紗には全くなかったのだ。

「やっぱ舞さんがいると賑やかよね。」

笑いながら舞に付いていくみちるに有紗は少しだけ心が痛んだ。変な気を回してしまって話が出来なかったのを舞に否定されたことが引っ掛かっている。

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