私は彼に愛されているらしい2
「無いな。薬買ってくる。鍵借りるぞ。有紗は着替えて寝ること。」

「でも…。」

有紗の言葉を聞く耳持たず、大輔は流れるような動作で鍵を掴みそのまま部屋から出ていく。大輔がかけた鍵の音が1人しかいない部屋に大きく響いた。

どうしよう。

取り残されて一番最初に思ったのがそれだった。

どうしよう。

でも何を考えても仕方ない、動くさえ起らない有紗に選択肢はないのだ。

大輔に言われたとおり部屋着に着替えてのそのそとベッドに潜り込む。着替えて分かったが体は相当堪えていたらしく、節々の痛みを感じて今日何度めか分からないため息を吐いた。

大輔が戻ってくるまで、それまで少し目を閉じて休もう。そしたら帰ってもらって薬を飲んでゆっくり寝ればいい。

第一にこんなところにいたら大輔にうつってしまうではないか、そんなことを頭の中で考えながら有紗はいつのまにか眠りに落ちてしまった。

それからどれくらいの時間が経っただろう。

「有紗。」

次に起きた時は大輔に肩を叩かれた時、有紗はどうしようもなく重たい瞼をゆっくりと開けて彼の顔を視界に入れた。何か声にしたくても力が入らない。それでさえも億劫なほど弱っている自分を思い知らされた。

目を開けれただけ奇跡だろうか。

「起きて、頑張って薬飲んで。」

そう言いながら大輔は有紗の体を支えて起こして薬を差し出す。掌に転がる錠剤が2粒をぼんやりとしながら手にして同じく差し出されたペットボトルの水で体内に入れた。

僅かな大きさしかない薬を通すだけでも喉に抵抗感があるようだ、水を飲むのも辛いなんてかなり重症なのだと熱を含んだ息を吐く。

「熱少し上がってるな。まだ寝てろ。」

ゆっくりと寝かせてくれ額に冷たいものを乗せてくれたことに気が付いて有紗は思った。家に冷えピタなんてものはない、これも買ってきてくれたのだとひたすらに感謝した。

< 60 / 304 >

この作品をシェア

pagetop