私は彼に愛されているらしい2
体中に水分が染み渡るような感覚に飲む勢いが止まらない。みるみる減った中身は半分以下になっていた。

「飲んだな。なんか食べるか?ゼリー、プリン、アイス…。」

「アイス。」

提案される単語の1つに有紗は迷うことなく声をあげる。水分補給をして元気が戻ったのだろう、まだ声こそ掠れているものの今日一番の勢いに大輔は瞬きを重ねた。

しかし有紗は真剣だ。

アイスアイス、アイス好きな有紗にはそれ以外の選択肢なんて必要ない。

「やっぱりな。」

それが分かっていた大輔は笑いながら頷いて冷蔵庫に向かった。

「どっちにする?」

冷凍庫の引き出しを開けたまま両手に掲げて有紗に選ばせる作業が何回か続く。どれだけの種類を買い込んでいるのかと可笑しくなったが、さすがにそこまで体力が戻っていない有紗はせっかく手にしたカップアイスもほどんど残してしまった。

少し胃の中に入れたことで何故か体が落ち着く。

時計を見れば2回目の薬が飲めるほどに時間が経っていた。

「ずっと居てくれたの?」

「んー…居たっていうか本読んでたっていうか。」

さっきまで大輔が座っていた場所を見れば何冊か本が重ねられておいてある。有紗が勉強用にと買った自動車の専門誌が殆どで、中には小説もあった。

「マンガじゃないんだ。」

「こっちのが面白い。もっかい寝とけよ?ほら、薬。」

「ありがとう。」

まだ多少体に不安定さを感じるが、一人で座って薬を飲めたことに安心した。確実に症状はよくなってきていることが実感できる。

もう一眠りすればさらに回復しそうな予感に包まれて有紗はまた横になった。

あれだけ寝たのにまだまだ眠れそうだ。ふわふわしてきた感覚にまどろみながら有紗は大輔の方を見た。

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