私は彼に愛されているらしい２
やっぱりそうじゃないか。

だから嫌だと言ったのに無理矢理にねじ込まれた予定、恨みを込めて横目で小春を睨むと目を泳がせて逃げられた。

確信犯だ、心の中で舌打ちをして拳を握る。足りないメンバーを探すのが面倒くさかったからっておもいきり顔に書いてあることを気付かないとでも思っているのか。

ああ、気分は最悪だ。

どうもテンションの高すぎる男とは波長が合わないと有紗は心の中でため息を吐いた。

「ねえねえ有紗ちゃんて休みの日とか何してんの？」

「寝てたり、買い物したり映画見に行ったりしてる。」

「マジ？俺と一緒じゃん。どんな映画見るの？何系？」

「洋画のが多いかな。」

「マジで？一緒だし！邦画もいいんだけどさ、やっぱ洋画のが見ごたえあるよな！」

やたらと声を張り上げリアクションも大きな反応に愛想笑いもどこまでもつか分からなかったが、とりあえず小春の顔を立てるべく有紗は取り繕うことにした。

有紗の趣味やら何やらを聞き出しては自分と同じだ似ているだと繰り返す単調な会話。自分はロックオンされたのだと諦めて当たり障りのない答えを出していく。

「俺たちマジで気が合いそうじゃね？」

どこまで芝居でどこまでやる気か分からないテンションは見ている側の方が疲れそうだ。

どうもテンションの高すぎる男とは波長が合わない。ああ、やっぱり気分は最悪だ。

抑えても抑えきれないその最悪の頂点は開始から１時間後に来て我慢のリミッターを振り切りそうだった。

席に通されてからずっと有紗の向かい側に座るこの男、赤と白のギンガムチェックシャツを羽織ったこの男、やたらと上から目線で腹が立つ。

「だから有紗ちゃんはもうちょっと可愛らしい恰好した方が似合うって。俺が言うんだから間違いない！」

記憶を掘り起こせば確か年上だったような気がするこの男は、酒の力もあってか椅子の背もたれに体を預けて大きな態度を取り出した。

その時点で面倒くさい雰囲気は十分に醸し出しているが有紗は冷ややかに受け流す。

< 72 / 304 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop