私は彼に愛されているらしい2
カクテルに口を付けていたことで若干反応が遅れてしまったが、意味が分からない言葉を吐かれて有紗は不快感よりも先に純粋な気持ちで聞き返していた。

何をどう勘違いされたのか、その判断の理由がよく分からない。さっきまでの会話の中で苦労知らずと思われるものがどこにあったのか本気で考え込んでしまった。

いったいどういう流れだろう。

「え、なに?どういうこと?」

「だってあれでしょ?コネでいい会社入って特に何の責任もない事務仕事で高い給料貰ってんでしょ?そりゃ焦ることなんてしないもんね。」

「えー?そうなの?」

「羨ましい!」

「俺たちなんて毎日戦争なのにな?」

見に覚えのないことを真実の様に発言されて有紗は固まってしまった。

何故かそれを信じている今日初めて会った千春以外の全員から好奇な目で見られて次第に戸惑いが生まれる。

「ちょっとちょっと…何で有紗がそうだって決め付けるのよ。」

流石によくない空気を感じた千春が割って入った。

「そんなの少し考えれば分かることじゃね?地元で高卒、一流企業へ就職なんてことはつまり企業の地元推薦枠かコネ入社しか有り得ないでしょ。」

「は?」

ギンガム男の自信満々な回答に今度は有紗と千春、2人が声を揃えて疑問符を口にする。

「えー?何それ、本当超羨ましい!」

「私なんて他県から1人で乗り込んできたよ!?」

「あ、俺も。」

固まってしまった2人をよそに周りが成る程と歓声をあげた声で再び思考が回っていった。

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