私は彼に愛されているらしい2
そして有紗と小春は顔を合わせてお互いが疑問符だらけの表情で首を傾げる、すると少しずつギンガム男の言い分の糸が掴めた気がして頭の中がスッキリしてきた。

「一流企業がある地元って最強じゃね?」

高らかに声を張り上げるギンガム男は放っておこう、この派手な誤解はどこからきたのか思い当たることがある。

第1に、最初の自己紹介で千春とは高校時代からの友人であると告げたこと。それによって2人の地元がここであると分かったことが始まりだと思う。

第2に、事務職であると告げたこと。設計士であると言えば仕事の話にしかならないし、印象が悪くなると経験上知っていたからあえて言わなかった。

それに設計が事務仕事であることはある意味間違いではないのだ。

第3に、勤め先がバレてしまったこと。世間的に見てもかなり知名度の高い会社の子会社である勤め先は、この近辺はもちろん、関連会社であれば誰でも知ってる一流企業だ。

だから給料の高さも具体的ではないにしろ、ある程度の予想をつけられたのだろう。

多分この辺りから、有紗は高卒で一流企業に入った地元のラッキーガールだと思われたに違いないと分析をした。

確かにそういう人がいることは知っているし、同期にもいる。だからそう勘違いする気持ちも分からなくはなかった。

挙句、彼の中の推理は暴走して有紗はおそらく実家暮らしという設定になっているだろう。実際は一人暮らしなのだが彼の中でその選択肢はない。

そういう考えから暴走した妄想が口から飛び出してしまった、今おかれている状況はこういった具合だと有紗は理解した。

勝手に考えが暴走するのは分かる、有紗にも身に覚えのあることだ。

「なに…こいつ。」

ただ腹が立つのは何故か最初から決めつけで発言してくること。

そしてあえて気にしないようにしていたが、ギンガム男が有紗を馬鹿な女扱いしていることも気付いていた。その理由も予想がついて納得できる。

暴走妄想の安っぽい結論からだろう。

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