私は彼に愛されているらしい２
有紗の了解を得ると大輔はまたサイドブレーキを下して車を動かし始めた。

慣れたように駐車するのは前回も使った有紗の部屋に当てられた駐車スペースだ、特に手こずることもなくスムーズに駐車した大輔は我先にとシートベルトを外した。

「行こう。」

「あ、うん。分かった。」

降りるまでが早かった割には大輔はドアを開けた状態で有紗の様子を窺って待っている。とくに急かしている訳ではないことを悟った有紗は変に焦ることなくドアを閉めて部屋へ向かった。

後ろから車のドアロックがかかった音が聞こえる中を進んでいく。

階段を上った２階の角部屋の前で立ち止まりカバンの中から鍵を取り出した。

「今日はちゃんと鍵かけてるんだな。」

「あの日はたまたまだったの！」

噛みつきながら鍵を開けていつものように玄関の扉を開ける。

「何の本？」

「グッドカーの最新号。」

「ああ、あれね。えーっと、どこやったかな。」

大輔を玄関に置いて有紗は呟きながら部屋の奥に進んでいった。寝室への扉を開けて入っていった姿を大輔は何も言わずに見つめる。

リビングにはネイルセットやアクセサリーが並んでいて、出かける寸前まで支度をしていたことを感じさせた。ネイルセットが並んである時点で適当に支度したというわけではなさそうだと心の中で呟く。

「あったよ。はい、持ってって。」

寝室から出てきた有紗は、当然の様にリビングにあがっている大輔に何も思わず雑誌を渡した。しかし受け取った大輔の視線は少し散らかった状態のリビングに向けられている。

「あ、ごめん。散らかってるでしょ。」

「気合入れてったのにな。残念だったな。」

「えー？気合って言うか衣替えみたいなもんだよ、仕事着は変えたんだけどプライベートはやってなかったからね。」

「へえ。」

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