私は彼に愛されているらしい2
大輔を玄関に押しやろうと伸ばしていた有紗の両手が宙で固まった。その動きは図星であると言っているようなものだ、そう自分でも気が付いてもやってしまった行動は取り消せない。

俯き加減で苦しげな表情を浮かべていることも大輔は気付いているだろう。それでも。

「大輔に話すようなことじゃないから。」

「何だよ、俺の悪口か?」

「違うけど…でも聞いてて気分のいい話じゃないし。」

「それも分かってて聞いてんだよ。言ったら楽になるぞ、有紗。」

まるで魔法のような言葉に有紗は思わず顔を上げた。

そこには特に気合いを入れる訳でもなく、身構えてもいない大輔が有紗の言葉を待っているだけだ。世間話の延長のように話していいと言われている気がする。

どうしよう。

言ってもいいのだろうかと心が揺れたはほんの少しのことで、自分でも驚くくらい結論が出るのは早かった。いや、むしろ諦めにも近いのかもしれない。

大輔から視線を外して俯くと有紗は口元に力を入れて震える息を吐いた。

それが始まりの合図だ。

「…男って本当、女は自分より下じゃないとダメだって頭で生きてるからムカつく。」

気付けば口が動き出していた。

「女だってそう。男に頼って自分が欲しいものを揃えさせて、自分では何の努力もせずに楽に手に入れようとする根性が気に入らない。」

「…うん。」

「お金だって、学歴だって、何だって自分で手にしようとすればいいのにそれをしない。なのに手にした女に対しては妬んで羨んでどうしようもない感情をぶつけてくるなんて本当最悪。無い物ねだりもいいとこよ。」

流れるように言葉を続けると一区切りしたのか有紗は大きなため息を吐く。

「私さ、同期がいるっていっても殆どが男の子だし女の子がいたとしても一般で設計士なんてあまりいないの。そこでもまあ…ちょっと話が合わなかったりするんだけど。社内の優秀な男の人を探しては優良物件だなんて半分以上本気で言っててさ、引いたりすることもあるのよね。」

「うん。」

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