私は彼に愛されているらしい2
「もしもーし?」

「俺。」

「知ってるよ。どうかした?」

貴方の名前が表示されていたから電話に出たのだ、声を聞いて本人だという確証もあるから余計な前置きは無しでも構わない。その思いが強く出たのかそれは声に反映されていた。

「機嫌悪いのか?」

酔っぱらいの相手が面倒なのだと言いたいが、以前自分が酔って大輔に電話をかけてしまった前科があるため何も言えない。

「ううん。ご飯食べてただけ。」

かつての失敗を思い出し、申し訳ない気持ちが生まれた有紗は手元にあったリモコンでテレビを消した。仕方ない今だけでも相手をしてあげよう、そんな上から目線の気持ちで電話の向こうの大輔に意識を集中させる。

「今日って友達の結婚式だったんじゃないの?」

「そう。」

「楽しかった?」

「まあ、ぼちぼちかな。」

「何よそれ。」

そう言うなり有紗は笑ってしまった。長い付き合いだ、大輔の考えていることは大体読めるようにもなっている。彼の言うぼちぼちは素直になれず恥ずかしがっている時に出るものだ。

つまりは懐かしい友人たちに会えて凄く楽しかったらしい。

この年になってくるとそうそう離れてしまった友人とは会うどころか連絡さえも取らなくなることが殆どだ。だから同窓会に似た友人の結婚式は晴れ姿を見れる楽しみと旧友に会える楽しみで心躍るイベントになっていた。

祝儀代が痛いなんて言うのは照れ隠しのようなもので、本当はその日を本人よりも心待ちにしていたりもするのだ。友人の幸せそうな笑顔はやっぱり嬉しい。

「みんな老けてた?」

「そんな変わるかよ。でも時間の流れは感じた。」

「そっか。」

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