私は彼に愛されているらしい２
何言ってるんだとからから笑う有紗に大輔は自分の中で何かが切れた気がした。そして諦めに似たため息を一つ大げさに落とす。

「ま、薄々感じてたけどね。」

「えー？」

「あれだけ言っても有紗はまだ俺を男として見てない訳だ。」

急に変わった低い声に導かれて有紗は顔を上げた。そしてぶつかる大輔との視線に思わず心臓が跳ねる。

あ、やばい。

そう思った時には遅かった。

「え、えっと…。」

何て返したものかと考えるだけで体が自然と後ずさっていく。

馬鹿なことをした。

逃げれば追われる、そんなことは冷静になれば分かるのに有紗は少しでも大輔との距離を作ろうと逃げてしまったのだ。

有紗が下がれば大輔が進む、それを繰り返しているうちに有紗の背中に硬いものが当たりそれ以上進むことが出来なくなった。

壁だ。

「この前の看病で油断した？」

「え？だ、大輔？」

聞いたことがないくらいの低い声に有紗の心臓が駆け出す。そして追い打ちをかけるように大輔の体が近付き、有紗の顔の横に手が置かれた。

「…っか…！？」

壁ドン、そう口から出そうになったが衝撃が強すぎて声にならなかった。

音を立てて突いた訳ではないのにその振動が全身を駆けたようだ、肩を跳ねあがらせて身を小さくする。驚きすぎて目を泳がせる有紗へと大輔はさらに顔を近付けた。

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