私は彼に愛されているらしい2
「俺が言ったこと。もしかして全部忘れてんの?だからこんな無防備に部屋に入れた訳?」

「部屋…?…あっ!」

今さら気が付いてももう遅い。

大輔の言う通り完全に油断していた有紗は今まで通りの感覚で大輔を招き入れてしまったのだ。しかもその感覚はだいぶ若いもので大学位のものか。

恋愛フェロモンを発されることなく同じ時間を過ごせたのは久しぶりで、看病してもらった時に懐かしい気持ちになったのは確かだ。

それに合わせてあの合コンでよっぽど憤慨してしまったのだろう、少しでも気の許せる相手に吐き出せたことで完全に油断してしまっていた。

そうだった、いまの大輔は有紗にとって危険な男。

なんということだ。

そのことに気が付いてももう遅い。しかも気付かせたのは当の本人である大輔の言葉だったのだから、尚のこと状況は悪かった。

これはもう、やばいの一言に限る。

引きつった顔の有紗を眺めて大輔はまた一つため息を吐いた。

「俺さ、ちょっと腹立ってきたわ。」

「や、あの、えっと。」

「言葉が駄目なら態度で示すしかないだろ。」

「大輔、ちょ…近い!」

更に顔を近付けられて有紗プチパニック。

身を固くしていたが、どうしようもない事態に有紗は苦肉の策として大輔の胸を押して離れようとした。

なんとしてでも抜け出さないと大変なことになる。混乱する頭の中でそれだけはしっかりと理解していたからか、押し出す腕にはかなりの力を入れることが出来た。

しかしそれが事態をより悪くする。

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