ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 しかしそんな不安もすぐに解消され、今では東京の生活に親しみを抱いているぐらいである。
 慣れないこと、新しいことには戸惑うことはあったが、同じ人間なので分かり合えないことはなかった。
 『今度紹介したい人がいるの』
乗り換えの駅に降りると、夕焼けはすっかり黒く染められホームや、周囲の建物の明かりがついていた。
階段をおり、別の電車の乗り場に行く。数分も立たない内に電車はホームにやってきて、私は乗り込んだ。車内はガラガラに空いており、座席の端に腰を下ろした。
 母が突然意を決したように、私に話してくれたのは、母の再婚話だった。相手は会社の上司で、独身の年上の男性。よく相談に乗ってくれて、男性のほうから結婚を申し込んだらしい。
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