ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 電車が、発車しますと車内放送が流れ、扉がぴしゃりと閉じた。ゆっくりと徐々にスピードを上げていく。外の夜景が後ろに行き、電車は地下に沈んだ。
 地下の狭く、暗い空間を、電車は奥に奥に進む。窓際からゴトンゴトンと音が聞こえ、車内は上下左右に揺れていた。トンネルに明かりが点々とつき、やがて次の駅にたどり着いた。
 以前母に、離婚する前の家族の話をした時、怒られた。
 『お母さんは離婚したこと、後悔していないの』
 『いまさら何を言っているの』
 『私は、嫌だったよ』
 『和奈も、お母さんを失望させるのね』
 ドアが開き、サラリーマンが乗り込んできた。電車はドアを閉めて、発車した。
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