ノスタルジア～喫茶店を訪ねて～

　私は、空気が薄くなるような気がして、深呼吸した。ファミレス前の信号はとっくに青になり、赤に変わってしまう。
　長々と、信号の前で考え事をしていたと思うと、恥ずかしくなってきた。小さな十字路の交差点には、あまり人も車も通らない。いつの間にか、見慣れない少女が隣にいて、一緒に信号待ちをしていた。
　信号は青に変わった。私は、さっさと渡ろうと歩きだそうとした。少女は全く動く気配がない。気づいていないだけなのか。あるいは渡れない事情があるのか。私はなぜか少女に釘付けとなった。見たところ小学校の低学年ぐらいだろうか。夏日に近い気温なのに、いかにも冬服で使い古されたように汚れていた。しかも、なぜか靴を履いていない。顔も少し汚れていて痩せている。
少女の視線は、空を見つめ、生きていないような目で、寂しそうに立ち尽くしていた。