ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 古い木製の黒いドアを、恐る恐る開けると、小さなドアベルがチリンと震えた。
狭い店内は、古臭く、どれもこれも色あせていて、時間に取り残されているような印象であった。
 妙に静かで、誰もいない不気味な空間に、私は足をしのばせ、席に座った。
メニュー表があり、願いをお書きくださいと書かれてある。
 『誰だって、いける場所ではない。特別な人間だけが行けるんだ』男は耳元で、秘密を打ち明けるように熱っぽく話した。
 『誰?その特別な人間って』
 『さあな』
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