ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 まるで、映画を見ているように、聖美ちゃんの記憶が映し出された。
土砂降りの雨。冷たく冷たく縮こまっている小さな少女、聖美ちゃん。雨は止み、公園を独りぽつんと漂っている。
(お母さん、何で迎えに来てくれないの)足を引きずるように、公園を抜け出す。
 水溜りに映った、彼女はひどく悲しく惨めな顔をしていた。
(本当は、分かっていた。お母さんは来てくれない)
(だって、聖美は、お母さんから好かれていないから)
 足は、家の方角と違う道に進んでいた。重たい足を引きずる聖美ちゃん。冷たい風が吹くと、小さい体は震え、おなかは空いていた。
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