ノスタルジア~喫茶店を訪ねて~
 先生の言いたいことが、分からなかった。先生が私の思いに気づいているかもしれないと、少しひやりとした。
 「それは、答えなければいけませんか」
街灯の光に照らされ、二人分の影が映し出された。誰も通らない道は、まるで私と先生のいる部室のようだ。
 でも違うのは、先生が黙っていること。
「いますよ。好きな人」
 先生は、私の言葉に、動揺していた。瞳が大きく揺れている。
「そうか」力なくつぶやく声は、闇夜に吸収された。
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