ウラ/オモテ

それから数分後のこと

軽そうなぺたんこの鞄を
ぶんぶんと振り回しながら
教室に入ってくる少年

わたしの右隣の席の男子だ

「はぁーあっ…」

席に着くなり聞こえるくらい
大きなため息をつくお隣さん。


鞄を机にドサッと置き
その鞄を枕にするように
机にうつ伏せになる



…か、顔がこちらを
向いていらっしゃる…

少し動揺しながらも
小説を読み進め、
いつも通りにふるまう



「なあ。」

こっちを見ている彼が
わたしに向かってそう言った


「……。」

ごめんなさい、
無視してる訳じゃないのです。

こういう時なんて返せばいいの…?


「ねえってば。」

突然耳付近でした彼の声に
反射的に彼の方をぱっと向く

「なに読んでるの?」

わたしの席の真横に
しゃがんでいる彼

「えっ…えと…
…しょ、小説。」


「小説って、それは見たら分かる。」

う…
そうでした。


「…謎解き系の奴。」

「そうなんだっ。」

彼はふっと笑うと自分の席に戻り
机にうつ伏せになった
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