【短】笑顔のままで
「あ、あのさ…」
許されるなら、あの日、君を傷つけてしまった日のことを謝りたい。
「あのときは……」
“間もなく―…”
俺の言葉にかぶさるように、駅のホームにアナウンスが響いた。
電車の到着を知らせるアナウンス。
『えっ!?今、…』
腰掛けていたベンチから立ち上がると、携帯を耳にあてたままキョロキョロと辺りを見回す君。
柱の陰に隠れていたけれど、心のどこかでは、君に見つけてもらいたいという思いがあったのかもしれない。
「ごめんな」
『ちょっと……っ』
「バイバイっ」
耳から遠ざけても漏れてくる君の声にもお構いなしで、俺は終話ボタンを押した。