【短】笑顔のままで

「あ、あのさ…」

許されるなら、あの日、君を傷つけてしまった日のことを謝りたい。


「あのときは……」

“間もなく―…”


俺の言葉にかぶさるように、駅のホームにアナウンスが響いた。

電車の到着を知らせるアナウンス。


『えっ!?今、…』

腰掛けていたベンチから立ち上がると、携帯を耳にあてたままキョロキョロと辺りを見回す君。


柱の陰に隠れていたけれど、心のどこかでは、君に見つけてもらいたいという思いがあったのかもしれない。


「ごめんな」

『ちょっと……っ』

「バイバイっ」

耳から遠ざけても漏れてくる君の声にもお構いなしで、俺は終話ボタンを押した。

< 10 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop