【短】笑顔のままで
無駄に動かしてしまった心臓が、身体の中に残っていたアルコールを全身にいき渡らせる。
軽く目眩をおこした俺は近くのベンチに腰を下ろした。
何処だ…?
キョロキョロと辺りを見回し、掲げられていた看板で駅名を確認する。
「…あぁ、ここか」
よく見れば見覚えのある風景。
ここは、一年ほど前に別れた彼女が、毎日のように利用する駅だった。
ふと、浮かんでくる彼女の顔。
化粧が崩れるのもお構いなしに、大粒の涙を流す彼女の顔。
あいつ、どうしてるかな…。
元気にしてるかな。
そう思いながら視線を向かい側のホームへと移した。